ロロノア家の人々〜外伝 “月と太陽”

  “年の初めの?”


ワンピースの舞台となってる世界は、
地形や気候といい、人や生き物の生態といい、
風俗や文明や歴史といい、
色々と架空の設定も天こ盛りじゃあありますが。
月があったり、
自転のせいで生じる偏西風や海流やらという
気象現象や地学的特徴やらが出て来るところを見ると、
どうやら“地球上”ではあるらしく。

 となると、
 海軍所有のそれだとて
 蒸気機関の船がまだまだ稀な段階なほど、
 (ローさんの潜水艦の動力は何なんだろう?)
 動力世界の歴史はまだまだ発展途上であるとはいえ、
 大海原を航海出来るほどには、地理や地形や法医学への研究も進んでおり、
 ポーネグリフや様々な歴史とその記述を研究している“考古学”が存在する以上、
 天文とか暦とかは、
 世界統一規模のが普遍的なそれとして広まっていることと思われる。


   おめでたい新年そうそう、
   小難しくも四角い物言いをしておりまして、
   どうもすいません。
   人間が頼りなくも柔らかすぎるので、
   たまにはお堅く構えてみようかなと思ったんですが、
   書いてる本人、何が言いたいのかを見失いそうなので、
   枕(ツカミ)の方はこの辺で……。




       ◇◇◇


何が言いたかったのかといえば、
航海という技術が進んで遠くまで足を運べるようになったことに並行し、
暦というものも、
旅とそれから流通には欠かせぬ要素として広まったことだろうから。
一年の始まりとか、
今現在の地球上と変わらないくらい
広域で統一されているんだろうなと思いましてね。

 「ああ、それはあるだろうね。」

乾燥大豆を丁寧に煎って、石臼で挽いた自家製きなこへと、
目の細かいザルでふるった砂糖を分量混ぜながら、
フレイアが うんうんと頷いて。

 「気候の違いから風習が違うのは仕方がないけれど、
  例えばクリスマスなんかは、
  いつ祝うのかってコト込みで
  結構 世界中で知られている行事になってるだろう?」

 「あ、そうだよね。」

南半球の国では真夏のクリスマスだそうだけど。
だよね。
雪を知らない訳ではないながら、
でも、当日は夏なんだから仕方がない。
あのコスチュームじゃあなく、トナカイも連れず、
サーフボードに乗ったサンタがやって来たって
そこは仕方がないってもので、と。
キッチンに居合わせていた衣音が、素晴らしい機転で応じたのへ、

 「何をまた、鬼が呆れそうな話 しているのかしら。」

自分のお部屋で顔を洗いの髪を整えのと、
きっちりと身だしなみを整えた この船の紅一点が、
小さな拳を腰へとあてがい、何だかなぁと眉を下げて見せ、

 「何だそれ、鬼が呆れるって?」

そんな彼女の後へと続いて、船長さんがやって来て全員集合。
相変わらずの少数精鋭、平均年齢も恐ろしくお若い皆々様。
よくもまあ この陣営で、
今でも変わらず“魔の航路”という呼称は健在の
グランドラインの中間地点まで到達していることよと。
縁あって遭遇した船は
一般の客船でも海賊船でも“おおう”とたまげてくれる一行で。
きなこを挽いてたフレイアさんのみが、
辛うじて大人と呼べる世代であり。

 “つか、海の男や海賊は
  そもそも“大人”世代なんて把握自体をしないしね。”

ですよねぇ。
よほどに子供なので“追い回し”とか“使いっ走り”だとか、
いわゆる 小僧呼ばわりをされることはあっても。
そうでない顔触れは、単なる“海の男”なだけであり、
わざわざ“大人”とは区分けされまいに。
それを思えば、やっぱりこの船は 海賊船としてはずんと異様な編成で。
最後に現れた船長さん以下、十代の少年少女3人だけで、
よくもまあ、中間地点側のレッドラインまで来られたもんで。

 「で、暦の話がどうかしたの?」
 「おいこら、流すんか、ベル。」

既に、自家農園収穫の新鮮野菜のサラダや、
アサリ…ぽい貝をふんだんに使ったクラムチャウダー、
蜂蜜パンに炙りベーコンと、
これも甲板で飼っているニワトリの卵を使ったスクランブルエッグが、
ほかほか立ち上がる湯気を窓から射し入る朝の光にきらめかせ、
美味しそうに待機中のテーブルであり。
おはようもそこそこに席に着いた食べ盛り二人を迎えた、
腕自慢のコックさん二人。
コントのようなやりとりをするお仲間への苦笑を
ついついこぼしてしまい、

 「ベルちゃんって意外と古い言い回しを知ってるよね。」
 「というか、
  今のって“来年の話をすると鬼が笑う”をもじったんだろ?」

クリスマスはもう済んじゃった去年の話だから…ってことだろけれど、
何を季節遅れなとは言わず、鬼が呆れるはよかったなぁと。
指摘をしたフレイアさんこそ、
まだまだお若い世代だのに
どこか年寄りめいた枯れた物言いをする日頃なのを棚に上げ。
こりゃあいいやと はんなり笑い、

 「何だ、そういう意味か。」

今やっと理解が追いついたらしい船長さんが、
なぁんだとそれこそ呆れつつ、
絆創膏の目立つ手で、
父上に似ているという短く刈った緑の髪を
わしわしと無造作に掻き回す。
そんな態度をされたの受けて、

 「…っ。」

ベルちゃんがたちまちかっちーんと来るあたり、
間違いなく とあるやりとりを彷彿とさせてしょうがなく。
ここに かつての麦ワラ海賊団のクルーが勢揃いしておれば、

 『なんか、その…。』
 『ゾロとサンジの
  日頃日常を見てるみたいだよな。』
 『いっそ性別が逆だったら、
  諍いにはならないかもだけど♪』
 『あ、それは言えてるvv』

なぁんていう
それはそれは有り難いご感想が、
擽ったげな苦笑とともに いただけたかも知れぬノリであり。(笑)
当然、そんなことまで知るお人のいない中、

 「なぁんだとは何よ。」

  直截に判らなかった野暮天のくせに
  ことわざとかそういうの使う奴って年寄り臭いぞ
  言ったわねっ

早速のこと そりゃあ威勢よく咬みつき合いかかる二人の前へ、

 「ほらほら、
  冷めると歯が立たなくなるから先に食べてよね。」

はんなりと柔らかく微笑ったフレイアが
ほれとテーブルの真ん中の空き地へ差し出したのが。
シンプルで形のそろった洋食器とは一線を画した、
いかにも手製ですと言わんばかりの
フリーハンドっぽい辺に縁取られた 焼きものの角皿で。
そこに並んでいたのは、
香ばしそうな焼き目も美味しそうな
プックリと膨らんだ小ぶりの角餅が1ダースほど。

 「あ…。」
 「おお。」

勿論のこと、本気の仲たがいじゃないのは百も承知だが、
お腹が空いてちゃ引き分けるのも大変だし、
何よりいつまでも片付かぬと。
このときばかりは“お母さん属性”な思考から出された切り札、
あっと言う間に功を奏しているから世話はない。

 「これアタシ大好きvv」
 「おおお、餅だ餅♪」

たちまちお顔をほころばせるお二人へ、
きなこと砂糖じょうゆがあるよ、
残念ながら小豆は用意出来なかった、ごめんねと。
味付け用のそれらを別皿に用意して並べて、さて。
それじゃあと朝ご飯が始まった一同で。

 よくもあったな こんなものまで、

 こないだ寄った港でフレイアが見つけて、
 珍しいなあって買っといたんだって。

 それを昨夜のうちに水に浸しといて、
 後は蒸してから すり鉢でとんとんとんとネ。

さすがに餅つき用の臼や杵はなかったので、
早起きして来た衣音と二人掛かりで
頑張って搗いたらしく。
美味しい美味しいとお仲間が喜ぶお顔のためならば、
骨惜しみをしないところも、
お母さんです、お二人さん。(笑)

 「でも、なんで朝からお餅?」

こればっかは箸を使わなくてもいいという認識か、
手に取ったそのままぱくつき、
よくよく延びてコシのあるのを、
うにむにと嬉しそうに味わいつつ。
みかん色の髪のお嬢さんがふと聞いたのへ、
これへは衣音が肩をすくめる。

 「だから、暦の話をしていたんだけどもね。」
 「…あ・そか、これって新年の食べ物なんだ。」

ベルちゃんはこのグランドラインで生まれたお嬢さんじゃあるけれど、
何しろ、世界中から“通”が集まる
あの“バラティエ2”のオーナーの料理で育っていることもあり、
食べるものに関する各地の著名な風習には通じている方。

 「アケボノの村でもそうだったの?」
 「まあな。」

既に4つ目を頬張る船長さんがうんうんと頷き、

 「和風というか、稲作する土地ならではの風習だけどもね。」

秋に収穫した米のうち、
粘り気の強くなる種類の米を
蒸して ついて丸めて神棚に供えたりする。
勿論のこと、人々も食べて、
いい年になりますようにと御利益を願うらしいのだが。

 「俺の記憶にゃあないんだけれど、
  そもそもは南国生まれだったらしい母ちゃんが、
  やっぱりそういう風習は知らなくて。」

くすすと笑った船長さんが言うには、

 「神棚だのへは小さいのだけど、
  床の間へは“お鏡”っていう、
  そりゃあ大きい二段重ねの丸餅を供えるのを見てサ。
  あんなところへ出しっ放しにしていていいのか
  晩のうちにネズミに食われないかって、
  やたらと気にしてたらしくって。」

そうそう、懐かしいよなぁ、
きんとんは子供組との取り合いになるし、
ツタさんのがまた特別美味しかったからさ、
しまいにゃ凧揚げや羽根つきでの勝負になっちゃって…と、
お正月のお話に沸いてしまったアケボノ村の和子二人。
そんな彼らを傍観しつつ、

 “そか、ウチのニューイヤー・メニューが和風だったのは、
  ルフィさんを偲んでだったのね。”

実はお雑煮も知ってるし、
その前に年越蕎麦だって毎年食べてたベルちゃんが、
なぁんだ、変わってるぅって言われるかと思って言わなかったけれどと、
こっそり胸を撫で下ろしたのは、
ヲトメなりの見栄だと免じて、
ここだけの話にしてやってくださいませです。(笑)



  A HAPPY NEWYEAR!






  〜Fine〜  13.01.01.


  *何だかんだで 新しい年がやって来ましたね。
   相変わらずにとほほな管理人ですが、今年もどうぞよろしくですvv

  *新年のっけにこれを持って来るとは思わなかったでしょ?
   わたしも“ぱぴぃ”を書くつもりでいたのですが、
   ワープロを起動しつつ、どんな気の変わりようがあったものか、
   気がつけばこちらを書き始めておりまして。

   ゾロの出身地であるシモツキ村は、風俗的に純和風っぽくて。
   なので、
   陸へ上がった彼らの住まう隣村の曙も和風としたのですが、
   ワの国(和の国?)というのは
   どうやらグランドラインにあるようですね。
   ブルックの影の話に出て来た最強のお侍さんといい、
   胴体バラバラにされて登場の何とかえもんさんといい、
   これから上陸する舞台になる可能性大ってことなのかなぁ?
   お箸の文化があちこちに出て来ていたから、
   結構 歴史の古い国なのかもですね。(と、勝手に・笑)
   それにつけても、
   最近の子って、冬休みの遊びとして凧揚げとかするのかなぁ?
   独楽も今時はベイなんとかってのに成り代わってますしねぇ。


ご感想などはこちらへvv

 
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